II. ガレットの掃除 - Clean the Gullet
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さぁ、カッターのサイズ、各アングルも揃ったスクエアグラウンドファイリングができました。カッターを見てみると、横刃の下側に丸やすりで研いだ時よりも大きく研ぎ残しがあることに気づくと思います。
デプス後端からカッターの横刃下にかけの部分を英語で Gullet (ガレット、喉、食道)と呼びます。丸やすりで目立てした場合でもファイルサイズやどの程度上方へファイルを出すのかの具合によって、ここが残ってきてしまうことがありますが、カッター側面にも逃げ角がついているので、削り残しがあると横方向へ突出して、ワーキングコーナーの食いつきを邪魔してしまうことがあります。
どうすれば良いのでしょうか? 横刃の下部の削り残しがデプス後端の高さで横刃からまっすぐ下がるように丸やすりで削ってください。面倒ですよね.. しかし、ここを削ることで切り屑の排出能力もあがるようで、きれいに処理してやると切削スピードが一段速くなります。
チゼルビットファイルで削った横刃部分と、ガレットがスムースにつながるようにしてください。横刃下部を必要以上に彫り込んでしまうと、カッターを保持できなくなり、破損してしまうことがあるため、削りすぎないよう注意してください。
Oregon のスクエアグラウンドファイリングの資料
によると、
1/8インチ≒3.2mm の棚をあえて残して削るようにと書かれています 。これはカッターの強度を確保するための指示だと思われますが、丸やすりで研いだ場合のことを考えると、横刃下部をガレットまでスムースに
まっすぐ下がるように つなげてしまって構わないと思います。(丸やすりで研いだ場合のフック状態よりも強度はあるはずです)
Oregon 72CJ のガレットを丸やすりできれいにした状態
ガレット掃除は丸やすりでないといけない理由はありませんが、わざわざ高価なチゼルビットファイルを使う理由もないので、手持ちの安価な丸やすりで行うのが良いでしょう。
チゼルビットファイルで削られた横刃部分とスムースにつなげるには、最初に丸やすりの高さをデプス後端のガレット高さにしてワーキングコーナーの真下までくるように削り、それができたら、手元を下げて丸やすりを斜めにして横刃にスムースにつなげていくのが良いと思います。もちろん斜めにせず、丸やすりを水平にして高さを調整しても良いのですが、結構微妙な操作で難しいと思います。(何度かせっかく仕上げた横刃まで削ってしまった失敗の経験があります)
III. デプス量の設定 - Depth setting
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各種デプス量設定ツール
スクエアグラウンドファイリングの最適なデプス量は、どのくらいなのでしょうか?
丸やすりでの目立ての各種資料を調べてみると、.020 〜 .035 インチ、mm に換算すると 0.51mm 〜0.90mm くらいのようです。かなり幅があるのは、硬い木の場合はデプス量は少なく、柔らかい木の場合は多く設定するようになっているためです。
ラウンドグラウンド用コンスタントデプスゲージ (定量デプスゲージ、上の写真上から2番目と3番目) の場合、Oregon は .025" = 0.64mm、STIHL は .026" = 0.65mm です。しかし、新品の工場出荷状態のカッターのデプス量を計測してみると、これよりはるかに小さいことがわかります。
Oregon のスクエアグラウンドファイリング、レースチェーン (チェンソーレース用) に関する資料などによると、.017 〜 .020 インチ、0.43〜0.51mmと少し小さくなっています。
手持ちの既存のデプス量設定ツールで、.020"(0.51mm) 〜 0.25"(0.65mm) 〜 0.33"(0.84mm / カッター摩耗限界時) と試してみて、どうも既存のツールは、新品カッターの時から寿命末期までで1回、多くても2回、デプスを下げることを想定して設定されているようだ、という風に推測しました。
どういうことかというと、既存のデプス設定ツールでデプス量をセットすると、その直後はかなりデプス量が大きい状態になっているのです。数回目立てするとちょうどよいところがあって、さらに数回目立てすると、デプスが浅くなって徐々に切れなくなってくる、という経過を辿っていると思われます。
ですので、目立てするごとにデプス量をセットしてしまうと、常にデプスが深すぎる状態になってしまうのです。
現在市販されているツールは、面倒なので普段はデプスを触らず、切れ味が落ちてきてからデプスをセットする、というのが想定されている使い方なのだと思われます。
では、その想定から外れて、常に最高に切れる状態をキープしたい場合はどうすれば良いのでしょうか?
カッターや、上刃切削角の設定によって異なる可能性があるのですが、手元でテストしてみたところ、ワーキングコーナーとデプストップを結んだ線の勾配が 4〜5% 程度となる場合にもっともスムースで速く切れる結果となりました。
もちろん、既存の設定よりもかなり小さなデプス量となってしまうため、数回目立てしたらまたデプス量をセットすることになるだろうと思います。
現時点で私の考えているコンスタントアングルのデプス量、4% 勾配の場合の数値を載せておきます。
STIHL 製 36RS (3/8", 1.6mm, RSLF含む) の場合、初期カッター長 10.0mm 、摩耗限界時カッター長 3.0mm 、
カッター長が 9.0mm の時
デプス量は 0.30mm
カッター長が 1.0mm 減るごとに
デプス量は 0.04mm 増える (カッター長 8.0mm で 0.34mm)
カッター長が 3.0mm の時
デプス量は 0.54mm
です。まだいくつか考慮しなくてはいけないポイントがあるのと、テストが不十分なのでこの数値は変わる可能性があります。かなり面倒ですが、試してみたい方はカッター長をきっちり揃えて、ノギスとシックネスゲージなどを使ってデプス量をセットしてみてください。
かなり手間も時間も食うのですが、カッター長とデプス量をきっちり揃えるとそれだけでかなり切削速度が速くなります。
現時点での簡単な方法は、切れなくなるまでデプスは放置する、切れなくなったら市販ツール (プレートタイプのハードモード、写真の 4,5,6番目など) を使ってちょっと甘めにセットする、だと思います。